歯周病治療(初期治療、SPT、歯周外科)
歯周初期治療について
歯周病予防はもちろん大切ですが、実際に歯周病にかかっている場合には治療が必要になってきます。 歯周病の検査にはポケット測定(歯と歯茎の組織の離開度)を調べますが、 通常4mm以上のポケットを持つ方は歯周病と診断させていただいています。 またその測定時に出血が見られる場合は、その病気が今も進行中と判断しています(喫煙される方の場合には、出血傾向が認められない場合も多いです)。
このような場合には歯周病の治療を治療のプロトコル(治療手順)にしたがって進めていきます。 まずは汚れている歯の周囲をきれいにしていく処置(歯周初期治療が大切になります)を行います。 歯周治療の目標はご自身でのメンテナンスが可能な環境にする事です。
スケーリング
歯周ポケット内にバイオフィルムや歯石などの細菌性沈着物が付着していると 歯肉は炎症を起こし腫れ、赤みを帯び、歯ブラシやデンタルフロスで出血します(この時点なら予防処置で回復ができます)。また更に細菌感染が進むと歯周組織と歯槽骨が破戒され、歯石がたまり、歯肉溝滲出液が外に出られなくなります(これがダム効果をおよぼしてポケット内が汚れるため、歯周病がひどくなります)。
歯石は軽石のように多孔性であるため、放置すれば細菌の繁殖スペースとなります。 バイオフィルムは歯ブラシや衛生士の行うPMTCなどで除去することが可能(予防処置)ですが、 歯石は一度付着すると歯ブラシやデンタルフロスでの除去は不可能です。つまり予防だけでは足りなくなるため、歯科医院での専門の道具を用いた除去(いわゆるスケーリング やルートプレーニングといった治療)が必要となります。
もちろん汚れた状態から回復させるために歯科医院で初めはプロの歯ブラシを行い、徹底的に歯垢を除去していきます。 しかし歯周ポケット内に付着するバイオフィルムを含むや大きな歯石は、超音波スケーラー等で除去します。超音波スケーラーの先端チップは数種類あり、行う部位などによりそれぞれ角度や太さなどが異なります。 また毎秒2,500~3,000回の振動をして、やや発熱するため、水や洗浄液を出しながら使用します。
超音波スケーラー等で歯の表面のプラークや歯石が除去されると、歯周ポケット内に対する歯ブラシやデンタルフロスでの プラークコントロールが可能になります。 この状態では歯周ポケット内に歯石が残っているため、深部まで歯ブラシの毛先を入れることは不可能ですが、歯周ポケットに対するブラッシングが治療以前に比べ可能となっていきます。
そして炎症が少しずつ消退したら、腫れがなくなりまた歯石が見えてきます。これらを少しずつ取り去ることと歯ブラシとの相乗効果である程度の落ち着きをみせます。 この段階で、歯周病に対する専門的な口腔ケア方法(ブラッシングのみならず、フロスや歯間ブラシの使用法についても指導いたします)について指導させていただき、ご自宅にて実践して頂きます。
スケーリングルートプレーニング(SRP)
スケーリングを行った後に行う評価で、4mm以上の歯周ポケットがあるかたは、ポケット底までの治療を行う必要があるため、麻酔を行った上で歯周治療を行います。 歯の形態は様々で、しかもそれは根の方向にいくにしたがって複雑になります。 ここでは衛生士が手で細かく行う作業を行います。 個々に適切な器具を用いて治療を進めるため1本の歯に対して数種類の器具を用います。 特に臼歯の治療には3~6種類の器具を使用することもあります。
上記の器具を用いてスケーリングでは、とれない深いところにある、歯石やバイオフィルムを除去し、複雑な形態をした粗造な歯根面をぴかぴかに磨きます。 かみ合わせも歯周病を悪化させる要素としてはかなりのウェイトを占めていますので、動揺している場合には仮の固定を行ったり、先に当たっている歯を削って調節するなどもこの時期に行っていきます。
更にご自宅で適切な口腔ケアを実践して頂き、新たに口腔ケア方法のご指導などを行います。 歯周ポケットを健全な状態へ近づけるために歯ブラシやデンタルフロスでのプラークコントロールを続けて頂きます。
歯周外科療法
歯周治療の目標はご自身でのメインテナンスが可能な環境にする事です。 歯周病に再び感染し悪化させないようにするためには、歯周ポケットを正常な深さにする事が必要です。 歯ブラシは最も重要な口腔衛生を保つ道具ですが、歯周ポケットが 3mm以上の深さの部位は清掃できないと報告されています。 そのため周初期治療後、再評価し歯周ポケットが健全な深さにならず、炎症が消失しない場合(6mm以上のポケットがある方)には歯周外科処置を行い、自己メインテナンスが可能な環境にする必要があります。 歯周外科手術は歯周組織に行う手術ですので、骨、歯肉、粘膜などの症状・形態に応じて様々な手術を行うことがあります。 その中でも通常の歯周病に行うスタンダードな方法としては、歯肉剥離掻爬術(フラップオペレーション)が行われます。 麻酔をして歯肉をメスで切り、歯肉自体を剥がして、翻転し、歯の根や歯を支えている歯槽骨をむき出しにします。 スケーラーで根の奥深くについている歯石や感染歯質を徹底的に除去し、骨が凸凹になってしまっているところをきれいに平らにした後、歯肉を元の位置に戻して縫合します。 手術時間はケースによって様々ですが、通常1時間くらいはかかります。 麻酔をするので手術中に痛みはありませんが、術後に傷口に痛みがでたり、多少の腫れは起こります。 術後感染予防や痛みどめとして抗生物質、鎮痛薬を数日分処方します。 前橋フクロ歯科医院では、院長が日本の歯周外科の総本山ともいえるJIADSの初期からのメンバーです。 奥歯の治療にはポケットを最小にする歯肉弁尖側移動術や骨や歯周組織の再生をかなえる歯周組織の再生療法も行っています。
外科療法以外の対症療法
初期治療後に6mm以上のポケットが残ってしまった場合など、本来は外科処置での対応に効果がありますが、対症療法的に保険処置として投薬や抗生物質の局所投与と全身投与を行っています。
効果は限定的ですが、行っている間は歯周病の進行も緩やかになります。
ただし保険処置ですので、回数に制限があるなど問題も多い処置だと思っています。
- ①歯周ポケット内に抗生物質の軟膏を入れる方法
- 歯周ポケット4ミリ以上のところに一週間に一度入れ、4回まで繰り返します。
- ②抗生物質や抗菌物質による投薬
- あくまで対症療法であり、根本的な解決にはなりませんので効果が限定的です。
できるだけ外科処置を行わないで歯周治療を成功に導くため、前橋フクロ歯科医院では 従来型の歯周病治療を根底からくつがえす、3DS療法を応用した『スピード歯周病治療』(超短期的歯周病消炎システム)を始めています。
SPT
最近では「メインテナンス」という用語に代わって「サポーティブペリオドンタルセラピー(supportive periodontal therapy:SPT)」という用語を使うことが,国内外の歯周病学会から提唱されはじめています. SPTは、歯周病治療後の再発防止と、再発が起こってしまった場合に早い段階での適切な処置ができるための、連続的な経過観察と予防処置を行っていくことです。 歯周病のリスクが中程度から高いレベルの患者さんが対象になります。 治療期間は、年に数回ご来院いただきフクロ歯科医院では健診とメインテナンス処置(PMTC、歯石除去等)、清掃指導、フッ素塗布等を衛生士が中心に行なっています。
歯周病は症状が出にくい病気で、腫れる、出血する、歯の動揺等の症状が出たときには取り返しがつかないところまで進行していることがあります。日頃のセルフケアも大切ですが、専門家によるメインテナンスも大切な予防です。